引っ越し先

引っ越し先

見た事のある風景

ついこの間引っ越したんだけど、ようやくひと段落したので、夜中に「ストリートビュー」で近所に何か面白いものはないかなぁとチェックしてた。

それで、色々と徘徊してたら「見覚えある」という感覚が突然湧き起こって、なんかその先に進めなくなってね。でも、この地域というか町内には、引っ越し前の内見で初めて足を踏み入れたのは確実で、久々にデジャビュとか既視感というものに遭遇したなって感じ。

まず引っ掛かったのは公園だったんだけど、その公園の周りをさらに徘徊してみると、どうやらその公園の奥側に写り込んでいる、お店の方に見覚えがあることが分かった。

但し、お店とはいっても全体的に薄汚れていて、シャッターが降りており、そのシャッターには落書きもしてあって、庇の上にある看板はボロボロで文字もほとんど剥がれ落ちて、一応日焼けの跡で「■■商店」と読めるけど、とても営業しているようには見えなかった。

なぜこのお店に既視感を覚えるのか凄く不思議で、暫くはストリートビューで色々と角度を変えたりして見てたけど、結局そのお店に実際に行ってみることにしたんだ。それが昨日の事。

そんなわけで行ってみたら、無かったw

まぁ、ストリートビューに反映されるにはタイムラグがあるから仕方がないんだけど、例のお店と両隣の家が無くなってて、そこはマンションになってた。当然、既視感もなし。どーも、ありがとうございましたってな感じ。

そこからは、どーせヒマだし近所をひと廻りして帰るかと思って歩き出そうとしたら、そこで思い出した。

ウチは私が小学校の時に1回、中学に入るタイミングで1回父親の転勤に合わせて引っ越してるんだけど、それぞれの引っ越し先で、その「■■商店」と似たような雰囲気のお店があったんだよね。もちろん廃屋…だったと思う。

小学校の頃の方は住んでいたウチの住所さえ覚えていないけど、そのお店の周辺だけはいきなり鮮明に思い出した。交差点を左に曲がってちょっと行くと、キンモクセイが植えてあるお宅があって、そこの隣が「■■商店」と同じような元お店だった。

ここで、さらに得体の知れない既視感というか気持ち悪さが出てきた。全部の引っ越し先で、キンモクセイが植えてあるお宅の隣が元お店というパターンに遭遇している事に気づいた。小学校の時に2ヶ所それぞれ別の県に住んで、さらに違う県に引っ越して中学から高校まではそこに落ち着いたんだけど、その3ヶ所それぞれで。

そして、私がこっちの大学に入って、ひとり暮らしをはじめた時の事を思い出したんだ。

夏休み明けに、いつも使っている電車が事故か何かで止まっていたので、別の路線の駅までちょっと歩いて行こうと、普段通らない道を歩いていたらキンモクセイの香りがして、そうその先を見たら、なんと工事用の防音シートだっけ? それに覆われた建物らしきものがあるだけだったw

それが元お店だったかどうかは分からない。今になって記憶が甦ってきて、当時は気にも留めてなかったから。ただ、この時点では元お店だったと確信してる。仮に、取り壊し前の元お店をその場で見ていたら、今じゃなくてその時に、過去何度も遭遇したキンモクセイと元お店について思い出したんじゃないかな。

はじめ記憶が混乱してるのかな、それとも自分で都合良く記憶を書き換えたのかもと思ったんだけど、どう考えてみてもそれぞれに違う外観を持ったキンモクセイのお宅とお店なんだよね。

何かの暗示なのかな。それとも無意識にそのシチュエーションを選んでいる? それともその組み合わせの場所に呼ばれている? 引っ越すのがちょっと怖いと感じつつも、引っ越してみたいとも思ってる。

これはフィクションです