カストリ雑誌『あやかし』を入手せり

カストリ雑誌『あやかし』を入手せり

それは床の間の床下に置かれ忘れられていた

太平洋戦争終結直後の日本では、エロ・グロを主題とした大衆向け雑誌が雨後の竹の子のように創刊され、そして消えていった。それらの雑誌を総称してカストリ雑誌という。そんななかに『あやかし』という雑誌があった。

『あやかし』はカストリ雑誌の語源のひとつとされる「三号で休廃刊」どころか、創刊号(1947年10月発行)のみしか刊行されず発行部数も僅かであったようで、関係者周辺に幾ばくか出回っただけで終わったが、編集発行人兼執筆者である岡本氏(仮名)のご遺族から、現存する貴重な『あやかし』を譲り受けた。

岡本氏自身はこの雑誌刊行後は出版業界に携わる事も無く、1957年に鬼籍に入られており、実際の入手ルートは岡本氏の息子さんのご遺族からという事になる。つまり、岡本氏のご遺族はいわゆる「カストリ雑誌」に(至極当然の反応であろうが)理解を示すことができなかったようで、形見として息子さんが文字通りこっそり隠し持っていたらしく、その息子さんが鬼籍に入られた後ご自宅を解体した際に出てきたものである。

『あやかし』の内容自体は、現在の感覚からするとファンタジー、もしくは怪談といった方がしっくりくる。雑誌名からも、カストリ雑誌の代名詞であるエロとグロを狙ったモノではない想像は付く。もっとも、1947年当時の感覚で読んだ場合はまた違ってくるのかもしれない。そこで『あやかし』に掲載されている記事のいくつかを次回より紹介していきたい。ただ、単純な転載では結構アクの強い文章で意味不明な部分も多いため、こちらで適宜再構成したうえでの掲載とする。

尚、予め断っておくが、『あやかし』は前述のように岡本氏が“編集発行人兼執筆者”であり、執筆についても全て氏一人で行っていたとの事。よって著作権的には問題ないと思われる。

これはフィクションです